秦末から漢帝国建国までの争乱時代に斉国を興し、その宰相となっていた田横の物語です。
まぁカンタンに言うと、項羽と劉邦の時代を別の視点から書いた小説ってコトになりますね。
始皇帝によって統一された国家が瞬く間に分裂、各国が割拠していく中で田横も故国・斉を
復興させてひとつの理想を遂げようとします。それは「他国への不可侵」でした。
秦統一以前のような各国が並立する世を基本として、それぞれが周囲の国を侵すことが無い
という世界を夢見ながら、楚の項羽・漢の劉邦といった大きな力や謀略に立ち向かう田横と
彼に従う臣下・協力者たちが魅力的にえがかれています。
実は宮城谷氏の長編作品を読むのは初めてなんですが、登場人物たちがとても魅力的に
えがかれていたり、個性立っていたりしていたのが印象的でした。
それは、ひとつは田横に惹かれ、彼の力になるために従う斉国の臣たち。
もうひとつは項羽や劉邦といった有名な人物たちが他作品とは違った、新しい(と言って決して
奇をてらったものでは無い)書かれ方をしていた事などです。
特に張耳と陳余の人物像は今までのイメージを真逆にさせられるものでした。理想に生きる
純真な陳余と、リアリスト(あまり良くない意味で)の張耳なんて今まで無かったものですよ。
伊谷の本作品中のお気に入り人物は魏王咎です。国が滅びるにあたり王たる自分の命を
差し出し、遺民の安全を願う。カッコよすぎじゃないですか。
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